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ガーヤトリー・マントラの逐語訳

2010.01.01 Friday

新年あけましておめでとうございます。
元日での更新に当たり、太陽神サヴィトリに捧げるガーヤトリー・マントラについて探求してみたいと思いました。

マントラを唱える際には、正確な発音が最重要であるといわれます。

それは、外国語の習得に例えてみれば、すぐに理解できるでしょう。
習ったばかりのカタコトの英語がなかなか理解されずに、海外で困った経験をしたことのある人は多いのではないでしょうか。
ネイティブに理解できる正確な発音を心がけることは、外国語を習得する上で、欠かすことができません。
それと同様に、マントラを唱える際にも、正確な発音を身につけることが大切です。

では、正確な発音を身につければそれで十分かというと、そうとは言えません。
外国語の習得に準えてみれば、正しい発音を身につけた上で、その意味を理解することが重要になります。

確かに、意味を理解していなくても、正しい発音ができれば、相手には何を言っているかが伝わります。
しかし、言葉の意味を理解せずして、相手と意思疎通を行うことは不可能といってもいいでしょう。

母国語の歌であっても、歌手であればその意味を十分に吟味せずして、聴衆を感動させることはできせん。
ましてや、古典言語として話者がほとんどいないサンスクリットであればなおさらのこと、神々に希うマントラを唱える上で、その意味を理解することは欠かすことができません。

ここでは、インドでも偉人・聖人が絶賛する、最高のマントラといわれるガーヤトリー・マントラを逐語訳にしてみました。
専門家でないため、間違いが含まれるかもしれませんが、その際はご指摘頂ければ幸いです。

満月を元旦に迎える今年、皆様にとって良い年となりますよう心よりお祈り申し上げます。

ॐ भूर्भुवः स्वः
om bhūrbhuvaḥ svaḥ
オーム ブールブヴァハ スヴァハ
(オーム 地よ、空よ、天よ)

om(オーム):聖音、原初音、ブラフマン

bhūr(ブール):「大地、土地、土壌、国、世界」
bhūḥ(ブーフ)【女性・単数・主格/呼格】<語幹bhū(ブー)>
連声:bhūḥ + bhuvaḥ → bhūrbhuvaḥ(ブールブヴァハ)

bhuvaḥ(ブヴァハ):「空気、大気」
【女性・単数・主格/呼格】<語幹bhuvas(ブヴァス)>
あるいは前述bhū(ブー)の複数・呼格の変化形
連声:bhuvaḥ + svaḥ → bhuvassvaḥ(ブヴァッスヴァハ)

svaḥ(スヴァハ):「天界、光、宇宙」
【女性・単数・主格/呼格】<語幹svar(スヴァル)>

「ブールブヴァッスヴァハ」は、ヴィヤーフリティと呼ばれる宣言文のひとつで、日々の祈りを始めるに当たり、地・空・天(虚空)の三界の神々を体現するために唱えられます。三界はその他、物質・精神・魂に、現在・過去・未来などに対比されます。

ブーフ、ブヴァハ、スヴァハは、それぞれ主格と呼格の変化形に対応していますが、文脈上、三界の神々に呼びかけて喚起しているとみることができるので、「地よ、空よ、天よ」、「地界、空界、天界の神々よ」とします。

तत् सवितुर् वरेण्यं
tat savitur vareṇyaṁ
タット サヴィトゥル ヴァレーニャン
(彼(か)の太陽神の愛でたき)

tat(タット):「その、それ、あの、あれ、彼、彼女」
【指示代名詞、中性・単数・主格】<語幹tad>

savitur(サヴィトゥル):「サヴィトリ神の、光輝の、激励者の、太陽の」
savituḥ(サヴィトゥフ)【男性・単数・属格】<語幹savitṛ(サヴィトリ)>
連声:savituḥ + vareṇyam → savitur vareṇyam
サヴィトリは男性名詞、サーヴィトリーは女性名詞

vareṇyaṁ(ヴァレーニャン):「愛(め)でたき、望ましい、優れた、素晴らしい、最高の」
vareṇyam(ヴァレーニャム)【中性・単数・対格】<語幹vareṇya(ヴァレーニャ)>
連声:vareṇyam + bhargo → vareṇyaṁ bhargo

タットは最高原理ブラフマンを指す言葉として用いられます。「汝はそれなり」(tat tvam asi)は有名な箴言ですが、ここでのタットは、同様に三界を統べる最高原理ブラフマンを指していると考えられます。
サヴィトリは、一切万物の源である太陽神です。サヴィトリは、「激励する、鼓舞する」を意味する動詞語根√sūから派生した名で、すべての存在を激励する神、鼓舞させる神、前進させる神と考えられています。
サンスクリットでは、表記上のva(ヴァ)音は、wa(ワ)と聞こえますので、「ワレーニャン」と発音できます。(サラスワティー、ワーストゥ他)

भर्गो देवस्य धीमहि
bhargo devasya dhīmahi
バルゴー デーヴァッシャ ディーマヒ
(神の光輝を獲得せんことを)

bargo(バルゴー):「光輝が、放射が、輝きが、光彩が」
bhargaḥ(バルガハ)【男性・単数・主格】<語幹bharga(バルガ √bhṛj)>
連声:bhargaḥ + devasya → bhargo devasya

devasya(デーヴァッシャ):「神の、天の」
【男性・単数・属格】<語幹deva(デーヴァ)>
発音は「デーヴァッスャ」がより近い

dhīmahi(ディーマヒ):「私たちは授かりたい、私たちは獲得したい、私たちは享受したい」
【一人称・複数・アートマネーパダ・願望法】<動詞語根√dhā(置く、与える、獲得する、賜る、享受する)>

ディーマヒは、「置く、与える」などを意味する動詞語根√dhā(ダー)の活用形ですが、「考える、知覚する、思案する」などを意味する動詞語根√dhī(ディー)として、瞑想に関する訳語を当てられることがあります。
文法上は、第4類の活用をとる語根√dhā(ダー)が考えられます。

धियो यो नः प्रचोदयात्
dhiyo yo naḥ pracodayāt
ディヨー ヨー ナハ プラチョーダヤートゥ
(我が為に、彼が知性を鼓舞せんことを)

dhiyo(ディヨー):「知性を、叡知を、知識を、信心を、祈りを」
dhiyaḥ(ディヤハ)【女性・複数・対格】<語幹dhī(思考、思慮、瞑想、信心、祈り、理解、知性、叡知、知識、心、意図、洞察、意見、概念、意志)>
連声:dhiyaḥ + yo → diyo yo

yo(ヨー):「その太陽神サヴィトリが、その彼が」
yaḥ(ヤハ)【関係代名詞、男性・単数・主格】<語幹yad(ヤド)>
連声:yaḥ + naḥ → yo naḥ
前文の太陽神サヴィトリを受ける関係代名詞

naḥ(ナハ):「私たちに、私たちのために」
asmabhyam(アスマビャム)【人称代名詞「私」、一人称・複数・為格】の附帯形

pracodayāt(プラチョーダヤートゥ):「彼が鼓舞しますように、彼が激励しますように、彼が霊感を授けますように、彼が導きますように」
【三人称・単数・パラスマイパダ・願望法】< pra-√cud(鼓舞する、促す、激励する、刺激する、霊感を与える、命令する)>

サンスクリットでは、動詞の態は、パラスマイパダ(他者のための言葉)とアートマネーパダ(自己のための言葉)に分けられます。
パラスマイパダは、その行為の結果が、動作主以外の他者にもたらされる場合を指し、アートマネーパダは、その行為の結果が、動作主自身にもたらされる場合を指します。
「ディーマヒ」はアートマネーパダの活用形なので、「私たちは(自身のために)授かりたい」となります。
「プラチョーダヤートゥ」は、パラスマイパダの活用形なので、「彼が(他者のために)鼓舞しますように」となります。
原語にあたることで、訳文では表せきれない文意を読み取ることができるため、原語での読解は正しい理解のために重要になります。

ॐ भूर्भुवः स्वः
तत् सवितुर् वरेण्यं भर्गो देवस्य धीमहि
धियो यो नः प्रचोदयात्

om bhūrbhuvaḥ svaḥ
tat savitur vareṇyaṁ bhargo devasya dhīmahi
dhiyo yo naḥ pracodayāt
オーム ブールブヴァハ スヴァハ
タット サヴィトゥル ヴァレーニャン バルゴー デーヴァッシャ ディーマヒ
ディヨー ヨー ナハ プラチョーダヤートゥ
(オーム 地よ、空よ、天よ
我らが、彼(か)の太陽神の愛でたき神の光輝を獲得せんことを
我が為に、彼が知性を鼓舞せんことを)


参照:
辻直四郎訳、「リグ・ヴェーダ讃歌」、岩波文庫、1970
菅沼晃著、「新・サンスクリットの基礎[上]」、平河出版社、1994
菅沼晃著、「新・サンスクリットの基礎[下]」、平河出版社、1997
MW Advanced Search, http://www.sanskrit-lexicon.uni-koeln.de/mwquery/
Sanskrit, Tamil and Pahlavi Dictionaries, http://webapps.uni-koeln.de/tamil/

ソーハム・マントラ

2009.12.25 Friday

सोऽहं
so'haṁ
・ソーハン


ソーハム瞑想として知られる「無声音」マントラです。息を吸いながら「ソー」、吐きながら「ハム」と唱えます。私たちは、毎日、意識せずとも、呼吸をしながらこのマントラを常に唱えているといわれます。インドの聖者たちは、この呼吸を意識して行うことにより、肉体や心などの物質的な領域を超越し、輪廻の束縛から解放されることを見出しました。
ソーハム(so'ham)は、sah+ahamのサンディ(連声)となります。直訳では、「それは私」「彼は私」の意味となりますが、万物に遍く浸透する遍在の至高神・ブラフマンと、自己の意が同一であることを示しています。
このマントラは、自己は分離した状態であるというエゴを諫め、日常、絶え間なく呼吸をしながら、万物の主と自己は深層で常に繋がっていることを教えてくれます。
また「ソーハム」(so'ham)は、アートマンや生命原理プラーナの象徴である「ハムサ」(hamsa)と、音が循環の関係にあるために表裏一体であることを示しています。

アグニ・ガーヤトリー・マントラ

2009.12.21 Monday

ॐ वैश्वानराय विद्महे लालीलाय धीमहि।
तन्नो अग्निः प्रचोदयात्‌॥

・om vaiśvānarāya vidmahe lālīlāya dhīmahi |
tanno agniḥ pracodayāt ||
・オーム ヴァイシュヴァーナラーヤ ヴィッドゥマヘー ラーリーラーヤ ディーマヒ
タンノー アグニヒ プラチョーダヤートゥ
・意味:我らが一切人火(ヴァイシュヴァーナラ)を知り、一切を燃やし尽くす方を瞑想できるように
アグニよ、そこに我らを導き給え


火天アグニに捧げるガーヤトリー・マントラです。
アグニの別名のひとつに、ヴァイシュヴァーナラがあります。ヴァイシュヴァーナラは一切人火と訳され、すべての人の中に存在して、食物を消化すると考えられている火です(上村勝彦訳、バガヴァッド・ギーター、岩波文庫、p207参照)。
アグニのマントラは、ホーマやハヴァナなど、聖火に供物を捧げる儀式(護摩)には欠かすことができません。
アグニの宿る聖火により、私たちの一切の穢れや、大気の汚染が燃やし尽くされると信じられています。
このマントラが収録されているCDには以下のCDがあります。
・「Beginning Shlokas in Song and Chant」(トラック12)

スーリヤ・ガーヤトリー・マントラ

2009.12.20 Sunday

ॐ भास्कराय विद्महे महाद्युतिकराय धीमहि।
तन्नो आदित्यः प्रचोदयात्‌॥

・om bhāskarāya vidmahe mahādyutikarāya dhīmahi |
tanno ādityaḥ pracodayāt ||
・オーム バースカラーヤ ヴィッドゥマヘー マハーディユティカラーヤ ディーマヒ
タンノー アーディティヤハ プラチョーダヤートゥ
・意味:我らがバースカラ(光をつくる方)を知り、偉大なディユティカラ(光彩を放つ方)を瞑想できるように
アーディティヤ(アディティの息子)よ、我らを導き給え


太陽神スーリヤに捧げるガーヤトリー・マントラです。
スーリヤは、世界中の人々が古くから礼拝してきた自然の恵みであり、多くの別名があります。
スーリヤを礼拝することによって、健康、活力、良運がもたらされ、さまざまな困難が解消されるといわれます。
このマントラが収録されているCDには以下のCDがあります。
・「Beginning Shlokas in Song and Chant」(トラック12)

ドゥルガー・ガーヤトリー・マントラ

2009.12.19 Saturday

ॐ कात्यायन्यै विद्महे कन्याकुमार्यै धीमहि।
तन्नो दुर्गा प्रचोदयात्‌॥

・om kātyāyanyai vidmahe kanyākumāryai dhīmahi |
tanno durgā pracodayāt ||
・オーム カーティヤーヤナーニャイ ヴィッドゥマヘー カンニャークマーリャイ ディーマヒ
タンノー ドゥルガー プラチョーダヤートゥ
・意味:我らがカーティヤーヤニーを知り、カニヤークマーリーを瞑想できるように
ドゥルガーよ、我らを導き給え


宇宙エネルギーであるシャクティの化身ドゥルガーに捧げるガーヤトリー・マントラです。
カーティヤーヤニーは、ドゥルガー女神、またはパールヴァティー女神の別名で、カーティヤーヤナ(古代インドの聖仙)の娘という意味があります。
またカニヤークマーリーは、ドゥルガー女神の別名で、サンスクリット語で処女の意味があります。
ドゥルガー女神は、邪悪な力、貧困、病気、悪習、憂鬱を払拭する女神です。このマントラのジャパ(念誦)を行うことで、鈍重さ、悲哀、不正な想いなどが取り除かれるといわれます。
このマントラが収録されているCDには以下のCDがあります。
・「Beginning Shlokas in Song and Chant」(トラック12)

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